遺言書作成後に住所や氏名が変わっていたら効力は無効になる?

遺言書の作成をお手伝いした時にご依頼者様から「もし作成後に住所が変わったら遺言書は無効になってしまうのでしょうか?」「書き直したり、届出など何か手続きが必要ですか?」というご質問をいただく事があります。

実際に時間の経過とともに、遺言者がホームへの入居、引っ越しで住所を変更しなければならなくなったり、財産を相続させようとしていた娘が結婚して氏名や住所が変わってしまうことは起こり得ます。
そこで本記事では、様々な項目に分解して遺言書作成後に事情が変わった場合に遺言の効力が失われるのか、そうでないのかをお話します。

目次

遺言者の住所・氏名に変更があった場合

遺言者本人の住所変更は、老人ホームの入所や、家族との同居等で引っ越しを行う場合が想定されますが、遺言書を作成した後に遺言者の住所や氏名が変更になったとしても、何か届出をしたり遺言書を作り直すといった必要はなく、遺言書の効力にも影響はありません

ではなぜ遺言書に住所や氏名、生年月日を記載するのかというと、遺言書に記載されている”その人”を特定し、同一性を証明する必要があるからです。遺言書作成時点で”遺言者”や”相続人関係者”などの情報が特定され、様式に沿った形で作成されていればその遺言書は有効になります。そのため作成後に遺言者本人の記載した住所や氏名が変更してたとしても、遺言者の意思(内容)は変わらないと考えるため書き直しは必要ありません。

相続人の住所・氏名に変更があった場合

遺言書を作成した後に相続人である娘が婚姻関係によって氏名や住所が変更になってしまうことはよくありますが、この場合も先ほどと同様に何も手続きを行う必要はなく、遺言書の効力も有効となります

ただし、相続開始時後に遺言書記載の相続関係者の情報に変更があったことの証明として別途必要な書類があります。具体的には遺言書作成から相続開始(死亡)までの間の変更を証明するために、住民票の除票や、戸籍謄本などの公的証明書をもって同一性を証明することになります

住所の変更は住民票、住民票除票、戸籍の附票
氏名の変更は戸籍謄本、除籍謄本などで変更証明書とする。

相続人が先に死亡してしまった場合

相続開始時に遺言書で指定された相続人が先に死亡している場合、その遺言は無効になります。

無効になった場合、その財産は法定相続分に従って分配されることになります。さらに死亡した相続人が法定相続人であればその子に代襲相続する可能性があります。ここでよく勘違いされることですが、相続分として指定していた財産がそのまま死亡した人の子に代襲相続することはありません。そうなれば遺言者の期待していた結果ではなくなってしまう可能性があります。

受遺者が先に死亡してしまった場合

受遺者とは、法定相続人以外の人で、遺された財産を受け取る人のことを言います。この場合、遺言書で遺贈という形式をとらなければなりません。
では、遺言書で指定した受遺者が遺言者より先に死亡してしまった場合、その遺言書の効力はどうなるのでしょうか。
法律により「遺贈は遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した時はその効力を生じない。」(民法第994条 受遺者の死亡による失効)とされているため、その遺言は無効になります
無効になった遺贈分は、受遺者の相続人に渡ることはありません。その遺贈分は遺言者の法定相続人へ渡ります。

遺言執行者が先に死亡してしまった場合

遺言執行者は相続開始時に亡くなった人の代わりに遺言書に書かれている内容を実現する人です。遺言執行者が先に死亡していた場合、遺言書の遺言執行者にかかる部分以外は有効となります。従って遺言書の内容は維持され、「遺言執行者がいないとき」と同様の取り扱いになります。
相続開始時に遺言執行者がいない場合、相続人が家庭裁判所へ申立てを行い遺言執行者を選任することも可能ですが、遺言執行者を選任しない場合は遺言の執行手続きは相続人全員で行うことになります。

遺言執行者の名字・住所が変わった場合

遺言執行者が婚姻などで氏の変更や住所に変更があった場合でも、何ら変更手続きを行う必要はありません相続人や遺言者の住所、氏名が変わってしまったときと同様に、遺言書作成から相続開始(死亡)までの間の変更を住民票の除票や、戸籍謄本などの公的証明書をもって同一性を証明するため、変更になっていても問題はありません。

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