おひとりさまが頼るべき高齢者等終身サポートについて

日常生活の支援・見守りから亡くなった後の葬儀供養まで幅広くサポートする民間事業者が近年増加しています。NHKでも特集が放送されるなど注目されています。放送でも言及されていましたが、サポート事業者は参入業種も様々で、そのサービスの内容・契約形態・料金形態も内容が異なるため、利用者自身で事業者を比較検討するのは大変苦労します。
そこで本コラムでは高齢者等終身サポートを実際にご利用する際のサービス内容(事業所)の比較方法や検討時のチェックポイントをお話します。

目次

高齢者等終身サポート事業とは

高齢者等終身サポート事業という言葉自体は、比較的新しく定義された言葉です。これまであった、身のまわりの簡単なお手伝いから認知機能の低下による後見業務、死亡後の供養や各種手続きをご本人や親族、友人に代わって行う事業を総称して「高齢者等終身サポート事業」と呼ばれるようになりました。言葉の定義については変遷はあれど、基本的な理念としては、信頼できる第三者(事業者)を選定し、親族に頼らずとも本人が望む老後を実現させることです。

身近に頼れる家族がいないお年寄りが、家族の代わりとなる、信頼できる第三者にその役割を委任する契約をします。本人の健康状態や状況に応じてサポートするサービスは、これまでにも見守りサービスや終活サポート、身元保証サービスといった様々な呼び方で提供されていますが、サービスのニーズが高まる一方で監視する関係省庁や法律はなく、サービス内容や契約形態は各事業所によって異なるため、それぞれが自由に取り決めたルールで契約を行っているのが実態です。そのため、身元保証や死後事務を含むサービスを提供している事業所を「高齢者等終身サポート事業」としてまとめ、事業所の適切な運営とサービスの向上、利用者の安心を目的にガイドラインを設定することになりました。

ガイドラインによると高齢者等終身サポート事業の提供サービスは日常生活支援サービス、身元保証サービス、死後事務サービスの3つに分類され、本人との契約に基づき継続的にサービス提供されるものが対象となります。
具体的なサービス内容については、日常生活のお困り事から死亡後の事務までの流れに沿ってご紹介します。

日常生活のお困り事 

  • 買い物への同行や購入物の配達
  • 日用品や家具の処分
  • 病院等の付添い、送迎
  • 引っ越しによる家具類の移動や処分
  • 介護保険サービス受給手続き
  • 公共料金等の支払い

認知機能の低下によりサポートが必要になったとき

  • 医療施設への入院・介護施設への連帯保証
  • 病院の入退院等の事務手続き
  • 医療に係る意思決定の支援への関与
  • 緊急連絡先指定・緊急時の対応
  • 生活費の管理、送金
  • 不動産等の財産の保存管理、処分・売却等に関する手続き
  • 金融商品の解約・換価・売却
  • 印鑑、証書等重要書類の保管
  • 税金の申告・納税・還付請求・還付金の受領に関する手続き

死亡後の手続きに関して

  • 死亡の確認・関係各所への連絡
  • 身柄の引き取り
  • 死亡診断書・火葬許可の申請代行手続き
  • 葬儀・供養に関する手続き
  • 墓地管理、撤去に関する手続き
  • 遺品整理・残置物の処分
  • 住居の引き渡し
  • 各種行政手続き
  • 公共料金等の支払い停止等解約手続き

ちなみに私どもが高齢者等終身サポートとして提供するサービスは以下の通りです。

高齢者等終身サポート事業者を選定するときのポイント

ガイドラインが設定されたとはいえ、高齢者等終身サポート事業は、提供する事業者によってサービスの内容、契約時のルールもそれぞれ異なるため、ここからはその相違点を通して自分に合ったサービス事業者を選択する際のチェックポイントとしてご紹介します。

①サービス内容や費用の違い

サービスの内容については、日常生活支援から身元保証、葬儀などの死後事務に分類されており、事業所が提供する様々なサポートサービスの中から自分に必要なものを選択して利用する方法が一般的ですが、中には日常生活支援サービス、身元保証サービス、死後事務サービスといった形で支援の範囲ごとにパッケージ化されたものもあります。

サービス内容に基づく費用については、依頼したサービスに対応する時間に対して計算されるものが一般的です。例えば買い物や付添いなどを依頼した場合、1時間当たり○○円といった感じで交通費や実費以外にタイムチャージを支払う必要があります。その他にはサブスクのように月額や年会費として一定金額を支払ってサービスを受ける方法や、預託金の中から費用を賄う方法があります。

②費用を支払うタイミングの違い

費用を支払うタイミングは、預託金方式または都度清算方式があります。
預託金方式とは、必要な費用の総額をあらかじめ一括で支払い、経費が発生した際に預託金の中から支払われる方式です。預託金として、200万円程度納めることが一般的です。預託金方式はNPO法人や社団法人等で採用される方式です。都度清算方式は、利用したサービスに基づいて請求を受け都度支払いする方式です。都度清算方式は士業で採用されている方式です。預託金方式の場合、その資金を第三者が管理する性質上、費用の管理状況は不透明になりがちですが、都度清算方式の場合には利用内容が都度明確となり、請求金額が納得できるものとなります。

また、預託金方式の場合、自身の口座から一括で資金を支出しなければなりません。一方で都度清算方式の場合、手元に資金が残ることで思いがけない支出(例えば自宅の修繕や車の故障など)に対応できることから、家計に余裕が生まれます。

③解約時の返金リスクの違い

解約方法は、預託金方式と都度清算方式によって大きく異なるため、それらの違いを解説します。

預託金方式の場合、事業者から清算書の提出を受け、これまでかかった費用の認識に相違がないか確認をします。相違がなければ返金され解約が完了しますが、例えば自分の意図しない費用が請求されており、思っていた以上に返金額が低く計算されている場合があります。それらに納得ができない場合、事業者側に訂正の申し入れを行いますが、その申し入れに対して承諾されるとは限りません。最悪の場合、交渉が決裂し裁判等に発展することになれは利用者側にとって大変な労力がかかります。大変な労力がかかるがゆえに、利用者は納得できずとも事業者の返金に応じてしまう場合も少なくありません。
預託金方式の場合は事業者に資金を預けている性質上、必ず返金を受けるというプロセスが発生します。返金を受けるというプロセスはトラブルの温床になりがちです。全ての事業者ではないにしてもトラブル発生のリスクが高い契約形態と認識したほうが良いでしょう。
一方、都度清算方式の場合は、当然ながら解約時に清算というプロセスが不要なため、本人の意志表示のみで解約ができ、リスクがないと言っていいでしょう。

サービス履行状況について報告義務の有無

次に異なる点は、預託金方式および都度清算方式に関わらず、サービスの履行状況について報告義務があるかないかです。特に利用したサービス費用を預託金から賄う場合、預託金の管理状況は不透明になりがちなので、事業者からサービスの利用状況や残金について定期報告を受けて相違の有無についてチェックする必要があります。定期報告のある事業者を選ぶことが大切ですが、頻度や方法についてご自身の納得できるもの選択できると良いでしょう。

また生前であれば事業者からの定期報告で履行状況を確認することができますが、死後の事務履行に関しては利用者自身で確認する術がありません。そのため、履行状況に関しては第三者によるチェック体制があるかどうかも事業者を選択する上でポイントになります。
私共の場合、死後事務の履行状況に関して報告書と清算書をまとめ、相続人や利害関係者にお渡ししています。もし相続人や利害関係者がいなくても指定された方にお渡しすることが可能です。

⑤認知症を発症した場合のサポートの有無

サポート事業を利用していく中で、認知機能が衰えて認知症と診断される利用者が一定数いらっしゃいます。
認知症によって利用者の判断能力が不十分となった場合、預貯金の入出金や不動産の売却が出来なくなるほか、施設への入所、入院、手術の単独の申し込みが出来なくなります。
それら不利益を回避するために後見制度があります。
ガイドラインによると利用者の判断能力が不十分となった場合には、速やかに後見制度へ移行する手続きを行うこととされています。

サポート事業には業歴の浅い事業者も多く、後見制度への理解や経験が乏しいため後見人への就任が業務範囲に含まれていない場合があります。事業者ごとにそれら体制、実績の有無が異なるため、契約前に利用者自身で事業者の体制や実績を確認しましょう。

士業では、これまでに後見制度に深く関わり認知症の発症リスクを踏まえてサポートしてきた歴史があります。契約前には必ず認知症を含む将来的なリスクに備えた万全の対策をとり、任意後見契約から遺言、死後事務委任等の契約に基づいたサービスの提供しています。

まとめ

令和2年国勢調査によると、65歳以上の高齢者が含まれてる世帯のうち、高齢者の単独世帯の割合は3割近くとなっており、今なお増加傾向にあります。単独世帯で身寄りがない高齢者においては、これまで身元保証人の設定などで不便な面がありました。そのような方々の要望を受けて、高齢者等終身サポート事業が生まれ、その需要が拡大しています。

サポート事業をビジネスチャンスと見るや否や、様々な業種が参入しました。様々なバックグラウンドを持つ事業者が参入したため、提供されるサービス内容や質にバラつきが出てきました。その結果、利用者との間でトラブルに発展するケースが相次いだことから、事業者の適切な運営と利用者の安心を目的として、国によりガイドラインが策定されました。

最低限守るべきルールとして示されたガイドラインですが、現時点では違反があった場合でも罰則はなく実効性が乏しいと指摘されています。従って運営方針は事業者独自の倫理観に委ねられている側面があります。事業者の運営方針は玉石混交ですので、検討する際には、ガイドラインの知識を踏まえて事業者選定を行う必要があります。余談にはなりますが、一部の自治体では独自の優良事業者認定制度を設けて、選定の助けになるような情報を提供しています。とはいえ一部の地域に限られるため利用者自身でサービス事業者を見極める必要があります。

玉石混交である事業者を比較検討する上で大きなポイントとなるのが「遺贈・寄付」の取り扱いです。
ガイドライン策定前のアンケート調査(身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査)によると、利用者の死後に預託金を遺贈寄付として受け取るとされた事業者が7割近くいることが判明しました。これには驚きを禁じえませんが、調査結果を踏まえると事業の運営資金が利用者の遺贈寄付によって賄われている部分が大きいと考えられ、多くの事業者が遺贈寄付を前提とした運営方針であることがわかります。

遺贈寄付については問題となることが多く、ガイドラインでも死因贈与契約を避けるべきと明記されています。先ほどの優良事業者認定制度を実施していた自治体でも「遺贈寄付を受けない」ことを優良認定の条件に入れたことで、NPOや社会福祉法人など7社のうち認定された事業者は1社だけでした。

新規参入する事業者が自由に運営する一方で、私共士業では厳格なルールのもと公正公平な第三者的な立場で業務を行う責任があるため、目的不明金の受け取りは禁じられており罰則もあります。利用者の安心を担保しつつ、法律やガイドラインに従って事業運営を行っており、遺贈・寄付を受けることはありません。

最終的には利用者の判断に委ねられることになりますが、遺贈寄付に関しては慎重な取り扱いが求められるため事業者を選定する際の要点として提言したいと思います。

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