相続手続きに必要な戸籍収集の進め方

目次

相続人調査・戸籍収集の流れ

葬儀が終わってからも様々な手続きを行わなければならず、いざ相続手続きを行うにしても、何から手をつければ良いのかわかない。そんな方に向けて、まず例外なく、初めにやらなければならない相続人調査・戸籍収集についてお話したいと思います。
戸籍収集は避けて通れない相続手続の土台となる非常に重要なパートです。
このパートで少しでもミスや間違いがありますと、最悪の場合すべてやり直しすることになります。

戸籍収集は相続の数だけ戸籍収集のパターンがあると言われる程、ご家庭ごとに千差万別ですが、ここでは比較的シンプルな家族を例に挙げ手順を説明したいと思います。

両親と子供2人の4人家族の場合の戸籍収集

世帯主である80代夫が死亡し、配偶者の妻(80)と息子(55)、娘(50)がいるとします。
この世帯主は遺言書を書いておりませんでしたので、遺産は遺産分割協議という話し合いを経て分割されます。
遺産分割協議に先立ち故人の遺産を相続する手続きを行う上で必要な、相続人を確定させるため戸籍謄本を集めなければいけません。
戸籍謄本は故人の出生から死亡までの謄本が必要なり死亡から順に遡って調べていきます。

基本的な戸籍収集の流れ

STEP
亡くなった人の本籍地を調べる

まずは亡くなった方の本籍地を調べる必要があります。
死亡時の本籍地がわからない場合は、住民票(除票)を取得すれば本籍地も記載してもらえます。

STEP
本籍地で戸籍謄本をとる

本籍地のある市町村役場で戸籍謄本を請求します。
もし本籍地が遠方で現地役場に赴くことが難しい場合は郵送でも取得は可能です。

STEP
死亡時から出生時までの全ての戸籍謄本をとる

戸籍謄本の内容を把握しながら、遡って取得する必要があります。
出生時は親の戸籍に入っていますが、婚姻時には新たな戸籍が作成されるので、
最低でも2通以上は必要になります。
また転籍や法改正などで戸籍の様式が変更されているとそちらも全て必要になります。
必要になる戸籍謄本については詳しく後述します。

STEP
相続人の確定

故人の出生から死亡までの謄本を集めたら、民法で定められた相続順位にしたがって相続人を確定します。
この場合は配偶者である妻と息子と娘が対象になります。

STEP
相続人全員の戸籍と必要書類を用意する

全ての相続人が確定したら、相続人それぞれの現在の戸籍謄本も用意します。

STEP
相続人全員で遺産分割協議をする

残された財産を相続人同士で話し合ってどのように分割するか決める。

複雑な戸籍収集と相続範囲について

今回の場合は簡単なケースになりますが、もし亡くなった方に子供がおらず、両親も死亡している場合は、配偶者と第三順位に当たる兄弟姉妹が相続人となります。

その場合は被相続人(亡くなった方)の死亡時から出生時の戸籍謄本以外に、両親の死亡から出生までの戸籍謄本と兄弟の戸籍謄本が必要になります。

なぜ両親の死亡から出生までの戸籍をとるが必要があるかというと、その兄弟の他に相続人に当たる人物がいるかいないかを調べるためです。もし仮に腹違いの兄弟が生きていた場合その人も相続人になります。

また兄弟同士近くにいるとは限らず、それぞれ家庭を持っている場合も多いでしょう。
お住いの地域もバラバラであればその都度本籍地のある役所までの交通費や発行手数料(1通あたり450円~750円)×謄本数がかかるので、取得する謄本の数が増えるとその分費用もかさみます。

一言で『戸籍収集』と言っても作業ボリューム的にも負担が大きく、複雑化すればするほど相続範囲を漏れのないよう正確に把握していくことは専門家でもかなり骨の折れる作業になります。

そのためご自身での収集が難しい場合は専門家に依頼するケースが多いです。

どうして戸籍収集が必要なのか

まず遺産を相続するときには必ず他の相続人と遺産分割協議という話し合いを行って財産を分け合うことになります。
遺産分割協議には法定相続人が全員参加していなければ行うことができないため、誰が相続人になるのかを確定する必要があるのです。

戸籍謄本には親子関係や婚姻関係のほかにも、養子縁組の有無や認知した子供の記載もされているため
故人の戸籍を集めることで相続関係を確定することができるので相続人調査には戸籍収集が不可欠なのです。

もし、法定相続人の抜け漏れがあった場合は、
相続完了後でも初めからからやり直さなければいけなくなるため非常に重要な作業になります。

法定相続人とは

民法で定められた被相続人(亡くなった人)の財産を相続することができる人のことです。
配偶者とその血族が当てはまり、血族相続人には順位が定められています。
配偶者は必ず相続人になり、血族は優先順位の高い人が相続人なります。
例えば配偶者との間に子供がいない場合は配偶者と第二順位にあたる被相続人の両親が相続人になります。

*遺言書があれば相続できる人は法定相続人に限りません。

相続人調査に必要になる戸籍謄本の種類

  • 戸籍謄本 現在の家族身分が記載されている戸籍謄本
  • 除籍謄本 結婚や死亡、養子縁組などの理由でなどで戸籍内から全員がいなくなっている謄本
  • 改正原戸籍謄本 戸籍の電子化や法改正により様式が変更されたために使われなくなった古い戸籍謄本

この3種類は相続人調査に必ず必要になるので、すべてを集める必要があります。

*戸籍は平成6年に保存形式が紙べースから電子データでの保存が認められたため、各自治体で順次戸籍の電子化がすすめたため、平成6年より以前に生まれた人はほぼ確実に電子データの現在戸籍と改正原戸籍の2つが存在します。

戸籍謄本に記載されている内容

  • 本籍
  • 戸籍筆頭者の氏名
  • 戸籍事項
  • その戸籍に記載されている人全員の氏名・生年月日
  • 出生地
  • 身分事項
  • 婚姻日

戸籍謄本の取得方法

基本的には本籍地の役所に申請をして取得します。
自身が相続人であることを証明すれば申請書を作成しその場で発行してもらえます。
その時に必要になるものが、本人確認書類発行手数料の支払いです

発行手数料は戸籍謄本 1通につき 450円がかかります。
改正原戸籍・除籍謄本は1通につき 750円程度かかります。

用意するもの

  • 申請書
  • 本人確認書類
  • 委任状(代理人の場合)*代理人が同じ戸籍に属する場合は不要
  • 印鑑

遠方や役所に行く時間がない場合は

戸籍を調べるうちに本籍地が遠方だったり、働いていて役所に行く時間がないという人も多いと思います。
その場合は郵送での請求も可能になっています。

請求に必要な書類は各自治体によって若干様式が異なりますので、各役所のホームページを確認し申請しましょう。
基本的には戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)等交付請求書を印刷して必要事項を記入することになるでしょう。

請求書に必要事項に記入したら、郵便局で定額小為替を購入し、返信用封筒と切手、身分証明書を同封して送付すると返送してもらえます。

これらを幾度となく繰り返して全ての戸籍を集めることになるので、想像以上に時間と手間のかかる作業になります。
本籍地まで行く費用と時間もかかりますし、郵送での取得も可能ですが、その都度郵便局に行って小為替を用意して発送することになるので、働きながら準備するにはかなり負担の多い作業になります。

戸籍謄本の確認方法

戸籍謄本を取ったら次に読み解く必要が出てきます。
先ずは死亡時と出生時の戸籍をみて、本籍地と日付に連続性があるか確認します。
もし日付に開きがあったらその戸籍との間に他の戸籍があるということになります

同じ日付でも本籍地が以前のものから新しい戸籍に移動しているか確認します。
本籍地が違っていた場合も間に他の戸籍があると考えられるので、再度申請して戸籍謄本を取得してください。

現在有効な戸籍謄本
ひとつ前の改正原戸籍

このように一口に戸籍収集と言っても、どこに住んでいたか、どの世代なのか、どういった法定相続人になるのか?と言った具合に人それぞれ、相続それぞれ、必要な戸籍が異なってくることわかります。
ですので、「間断なく時系列で戸籍を収集する」原則に従って根気強く戸籍を遡ることが重要です。

戸籍収集が大変な4つの理由

取得する謄本の数が多い

単純に婚姻・転籍・法改正よって謄本の数が増えるため、集めるのに費用と時間がかかります。
法律が変わるたびに改正原戸籍が発行されているとその分取得する謄本の数も多くなります

戸籍の様式が古いと読み解きにくくなる

戸籍謄本が古くなればなるほど手書きや旧字体のものがあり、とても読みづらくなっています。
そのため本籍地などの連続性を確認することが難くなります。

本籍地ごとに戸籍を取る必要がある

戸籍謄本は本籍地ごとに管理しているので、本籍地が変わっているとその地域の役所まで発行の手続きをしに行く必要あります。本籍が変わるたびにこの作業を繰り返す必要があるため非常に手間がかかります。

戸籍が複雑な場合、慣れていないと見落とす可能性がある

相続人の調査では取得した戸籍に連続性があるかどうかが重要になります。
取得する謄本数が多くなると、慣れていないとその連続性があるかどうかを見落とす可能性があります。
全て集めたつもりでも一つでも連続性が欠けていることがあれば、相続手続きが先に進められなくなります。

まとめ

自分自身が相続人という立場になったら、相続手続きを行う上で必ず相続人調査をしなければいけなくなります。
必要になる謄本数もケースによって様々なので、自身で戸籍収集を行うということは簡単そうに見えて、実はかなりの時間と手間がかかる大変な作業だということです。
謄本の数が増えれば相続人の範囲を把握するのも一苦労ですし、抜け漏れがおきる可能性も高くなってしまいます。
また相続後に法定相続人が漏れていた場合は初めから全てやり直すことになるため非常に重要な作業になります。
1通不足したために手続きが止まってしまうこともあるため、相続人調査・戸籍収集に負担を感じる場合は専門家に依頼することをおすすめします。

JPコネクト行政書士事務所では遺言・相続業務に注力して業務を行っておりますので
相続についてわからないことや、お悩みがあればお気軽にご相談ください。

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