介護保険の負担限度額認定証で食費・居住費の負担が軽減!交付条件と申請手続きについて

介護負担限度額認定証
目次

介護保険の負担限度額認定とは

介護保険の負担限度額認定(特定入所サービス費)とは、介護保険施設サービスを利用したときにかかる「居住費」と「食費」の費用を軽減する制度です。

一般的に介護保険施設に入所した場合の食費・居住費(滞在・宿泊費)は全額自己負担となっていますが、条件を満たした方に限り、1日の自己負担上限額が設定されます。これが負担限度額認定です。負担限度額認定の自己負担限度額は、利用者の世帯の所得や資産に応じて利用者負担段階が設定されます。
そして、定められた自己負担限度額を超えた「居住費」と「食費」負担額が、介護保険の特定入所者介護サービス費として支給されるというものです。

では、介護保険施設の利用時にかかる居住費と食費の費用負担はどのくらいになるのか見ていきましょう。
介護保険の負担限度認定で設定される利用者負担割合と負担限度額(日額)は以下の通りです。

利用者負担段階と負担限度日額

※表の()内金額は居住費の従来型多床室、特養・特養ショートそれ以外、食費ショートステイの日額です。
2021年8月1日より負担限度額認定の限度額の一部が変更され、現在の負担限度日額は表の通りです。

利用者
負担段階
居住費 ユニット型
個室
(従来型多床室)
居住費 従来型居室
特養・特養ショート
(それ以外)
居住費 多床室
特養・特養ショート
(それ以外)
食費
(ショート)
基準費用額
2,006円
(1,668円)
1,171円
(1,668円)
855円
(377円)
1,445円
(1,445円)
第1段階820円
(490円)
320円
(490円)
0円
(370円)
300円
(300円)
第2段階820円
(490円)
420円
(490円)
370円
(370円)
390円
(600円)
第3段階①1,310円
(1,310円)
820円
(1,310円)
370円
(370円)
650円
(1,000円)
第3段階②1,310円
(1,310円)
820円
(1,310円)
370円
(370円)
1,360円
(1,300円)
利用者負担段階と負担限度額(1日あたり)
月額の自己負担額はどのくらい?

例えば、第1段階と基準費用額の1ヶ月(31日)の費用で比較すると、自己負担額は72,261円の差が生まれます。負担限度額認定で利用者負担段階が下がれば、自己負担費用がかなり抑えられるということになります。

基準費用額 62,186円(居住費)+ 44,795円(食費)= 106,981円(自己負担上限額)
第1段階  25,420円(居住費)+ 9,300円(食費)= 34,720円(自己負担上限額)
第2段階  25,420円(居住費)+ 12,090円(食費)= 37,510円(自己負担上限額)
第3段階① 40,610円(居住費)+ 20,150円(食費)= 60,670円(自己負担上限額)
第3段階② 40,610円(居住費)+ 42,160円(食費)= 82,770円(自己負担上限額)


介護施設利用時の居住費と食費の上限額は負担段階によって異なりますが、この負担段階は1~4段階に分けられています。このうち介護保険負担限度額認定を受けて費用が軽減されるのは第3段階までの方になり、第4段階の方は基準費用額もしくは施設が定める契約額を支払うことになります。

利用者負担段階別の対象者

利用者負担段階別の対象者は以下のとおりです。
公的年金収入額には課税年金だけでなく、障害年金や遺族年金などの非課税年金も含みます。

第1段階

生活保護受給者、世帯全員が市町村民税非課税世帯の老齢福祉年金受給権者

第2段階

世帯全員が市町村民税非課税かつ公的年金等収入額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下    

第3段階 ①

世帯全員が市町村民税非課税かつ公的年金等収入額+その他の合計所得金額の合計が80万円超120万円以下

第3段階 ②

世帯全員が市町村民税非課税かつ公的年金等収入額+その他の合計所得金額の合計が120万円超 

第4段階

市町村民税課税世帯の第1段階から第3段階以外の方

介護保険の負担限度額認定証の交付条件

介護保険の負担限度額認定証の申請は、以下の2つの条件に該当する必要があります。

条件① 世帯すべての人が市町村民税非課税であること
条件② 預貯金額等の資産が一定額以下であること

条件① 世帯すべての人が住民税非課税であること

負担限度額認定を受けるための条件の1つ目が、その世帯にいる世帯員全員が住民税非課税である必要があります。

この世帯全員には世帯分離をしている配偶者や、事実婚であっても「配偶者所得」は含まれます。
そのため、どのような夫婦形態であっても介護保険限度額認定を受けるためには、本人とその配偶者を含む世帯全員が住民税非課税世帯である必要があります。
但し、配偶者から暴力を受けていた場合や、行方不明の場合は例外的に世帯に含まれません。

世帯分離をしていても配偶者所得は世帯全員に含まれるので注意しよう。

条件② 預貯金額等の資産が一定額以下であること

負担限度額認定を受けるための条件の2つ目は、預貯金額等の資産が一定額以下であることです。
対象者の所得と預貯金などの資産の金額は利用者負担段階別に定められています。この預貯金等は資産性があり換金性が高く、価格評価の容易なものの3つで構成されます。そのため銀行預金だけでなく、有価証券や貴金属なども含まれ、負債は資産額から差し引かれることになります。

預貯金等について該当するもの

  • 預貯金(普通・定期)
  • 有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
  • 金や銀などの購入先口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属
  • 投資信託
  • 現金
  • 負債(借入金・住宅ローンなど)

生命保険、自動車、腕時計、宝石などの時価評価額の把握が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などは預貯金額等に含まれません。

負担段階別の預貯金等の金額は以下のように定められています。
※生活保護受給者は預貯金等の要件はありません。

区分預貯金等の金額
単身世帯
預貯金等の金額
夫婦世帯
第1段階1,000万円以下2,000万円以下
第2段階650万円以下1,650万円以下
第3段階 ①550万円以下1,550万円以下
第3段階 ②500万円以下1,500万円以下
特定入所者介護サービス費(補足給付)

課税世帯に向けた特例軽減措置とは

第4段階に属する世帯は住民税課税世帯のため、居住費と食費の負担限度額認定の対象外になってしまいます。
しかし、高齢夫婦世帯の一人が介護施設に入所したことによって、利用料の費用負担が増えて経済的に困窮するような場合もあるでしょう。そのような場合でも条件に該当すれば第3段階への負担限度額にすることが出来る特例減額措置が受けられます。
この特例措置は、高齢者夫婦世帯だけでなく、同居している家族の年収が低い低所得者向けの救済措置としても利用することが出来ます。

特例措置の適用条件

  1. 世帯の人数が2人以上であること
  2. 介護保険施設に入所して利用者負担第4段階の食費・居住費を負担していること
  3. 世帯の年間収入から施設の利用者負担費用の見込額を除いた金額が80万円以下となること
  4. 世帯の現金、預貯金額が450万円以下であること
  5. 世帯が居住の用に供する以外に資産を所有していないこと。
  6. 介護保険料を滞納していないこと

世帯の人数、年収には世帯分離している配偶者と配偶者の収入も含まれます。
利用者負担費用の見込み額には、介護保険負担割合証に記載の自己負担額、居住費、食費が含まれます。

負担限度額認定証の対象施設・サービス

この介護保険の負担限度額認定は日本にある全ての介護施設で適用されるわけではありません。
介護保険の負担限度額認定証が適用される施設は以下の6つの介護保険施設です。

  1. 特養(特別養護老人ホーム)
  2. 老健(介護老人保健施設)
  3. 介護療養型医療施設
  4. 短期入所生活介護
  5. 短期入所療養介護
  6. 地域密着型介護老人福祉施設

民間が運営する有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は負担限度額認定証の適用対象外になりますので、ご注意ください。

もし現在利用検討をしている介護施設がある場合、負担限度額認定の対象施設かどうかをしっかりと把握することが大切です。もし対象施設かわからない場合は、介護保険対象の施設一覧がお住いの地域の市のホームページに公開されていますので、そちらをご覧ください。
ここからは、それぞれの介護施設の特徴と入居対象者を順にみていきましょう。

特養(特別養護老人ホーム)

特養(特別養護老人ホーム)は、在宅での生活が困難になった要介護の高齢者が入居できる公的な介護保険施設です。
自治体や社会福祉法人などが運営しているため、老人ホームの中では比較的に安価に入居することができ、終身にわたって介護サービスを受けることが出来るのが最大の特徴です。
その反面入居希望者が多く、地域によっては入居までの待期期間が長くなってしまうことや医療体制に限界があります。

対象者

65歳以上の要介護3以上の高齢者
40~64歳の特定疾病が認められた要介護3以上の人
特例によって入居が認められた要介護1~2の人

老健(介護老人保健施設)

医師による医学的管理のもと看護・介護ケアのほか作業療法士や理学療法士等による機能訓練(リハビリテーション)や栄養管理・食事・入浴などの日常サービスを併せて提供する施設です。
老健(介護老人保健施設)は、介護を必要とする高齢者の自立を支援し家庭への復帰を目指すための施設です。そのため入居期間が原則3ヵ月~6ヵ月と短く、リハビリの効果が確認されたら退所することになってしまいます。

対象者

原則65歳以上の要介護1以上の介護認定を受けている人
40~64歳の特定疾病による要介護認定を受けている人
長期入院の不要、伝染病などの疾患が無い
 ※そのほかの条件は施設によって異なります

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設とは、比較的重度の要介護者に対して、医療処置とリハビリテーションを提供する施設です。
病状が安定期にあり、長期にわたる療養を必要とされる人、医療ケアを必要とされる方が主に利用します。
介護医療院とも言われ医療法人が運営する施設のため、医療ケアが手厚いことが特徴です。介護士の人員配置がほかの施設よりも多く、インスリン注射や経管栄養などの医療処置にも対応してくれます。但し終身でのサービス提供はしておらず、状態が改善された場合には退所を求められることもあります。

対象者

65歳以上の高齢者で医学的な措置が必要な要介護1以上の人
感染症などの治療が必要な疾患がない
65歳未満の要介護者の場合は入居相談
 ※このほか条件は施設によって異なります。

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所生活介護は一般的にショートステイと言われ、利用者が自宅で能力に応じた日常生活を営むことが出来るように短期間入所して、食事・入浴・排泄などの介護や日常生活の世話や機能訓練を行うサービスです。
自宅介護をしている家族の負担軽減や、まだ入所経験のない要介護者や家族が「施設に預ける」きっかけとしても利用でき、選択肢を広げることができるのが特徴です。

対象者

要介護1以上の認定を受けている人

短期入所療養介護(ショートステイ)

短期入所療養介護(ショートステイ)は、要介護状態になっても可能な限り居宅でその能力に応じた自立した日常生活を営むことが出来るように医学的管理のもと、看護や介護および機能訓練、必要な医療、日常的生活の世話を行うサービスです。療養生活の向上と家族の介護負担の軽減が目的で、何らかの事情により自宅での介護が出来なくなった場合に利用できますが、連続利用日数は30日の短期間の入所に限られます。

対象者

要介護1以上の認定を受けている人

地域密着型介護老人福祉施設

地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、入所定員が30人未満の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを提供します。

地域密着型介護老人福祉施設は、地域や家族との結びつきを重視した運営を行うこととされています。居住地にある施設でした利用はできませんが、また家族も面会に行きやすく、入所者の寂しさや負担感は軽減されるため、住み慣れた地域で暮らしたいと考えている人にとっては嬉しいサービスです。

対象者

事業所のある地域に住所がある人
65歳以上で要介護3以上の認定を受けている人
40~64歳の特定疾病による要介護認定を受けている人
 ※新たに入所する要介護1及び2の人はやむを得ない理由がある場合に限ります。

介護保険負担限度額認定証の申請方法

では介護保険負担限度額認定証を申請するには、どうすればよいのでしょうか。
ここからは申請の方法や注意すべき点をご紹介します。

申請手続きに必要な書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 被保険者証
  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 収入等申告書(申請書の裏面)
  • 同意書
  • 添付書類*必要に応じて用意する

添付書類は申告する項目で必要に応じて用意します。大阪市の場合は以下のとおりですが、申請に必要書類はお住いの地域によって異なることがある為、事前に確認おくと安心です。

申告する項目必要となる添付書類
世帯分離している配偶者等の課税状況配偶者の税証明
非課税年金の課税状況年金振込通知書等の写し
(年金収入額と基礎年金番号のわかる書類)
本人及び配偶者の資産状況金融機関等への残高証明のための同意書
・預貯金(普通・定期)通帳の写し
(ネットバンクは口座残高ページの写し)
・有価証券(株式・国債・地方債・社債等)証券会社や銀行の口座残高の写し
・金・銀(積立購入を含む)など購入先の
 口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属
購入先の口座残高の写し
・投資信託銀行、信託銀行、証券会社等の口座残高の写し
・現金自己申告
・負債(借入金・住宅ローンなど)借用証書等
添付書類

申請は本人以外の家族、代理人でも可能です。
家族が難しい場合、ケアマネージャーや施設担当者による代行申請も可能です。

介護保険負担限度額認定申請書の記入例

介護保険負担限度額認定申請書は、各市区町村役場のホームページからダウンロードすることが出来ます。
記入例をご覧いただき、必要事項を記入して指定された窓口へ申請してください。

※介護保険施設の所在地及び名称欄はショートステイの場合、記入不要です。被保険者本人の名前を記入し提出してください。
※平成28年1月より、マイナンバーの記入と提示が必要になります。
※申請書などについては、押印の見直しを行いました。

負担限度額認定証が届くタイミング

介護保険負担限度額認定申請書について提出した書類に特に不備がない場合、申請から約1週間程度で結果が通知され、第1段階~第3段階に該当した場合は、「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。
この認定証には定められた居住費と食費の負担上限額等が印字されていますのでご確認ください。

介護保険負担限度額認定証

申請時の注意点

介護保険施設の利用前に負担限度額認定証を受け取り提示すること

介護保険施設のサービスを受ける前に、お住いの地域にある各保健福祉センターの保健福祉・福祉担当(介護保険担当)へ申請して負担限度額認定を受けてください。「介護保険負担限度額認定証」は申請日の月の初日から効力を有するものです。施設利用前に「介護保険負担限度額認定証」の提示がない場合、減額を受けることができませんのでご注意ください。

負担限度額認定証の有効期限は毎年7月末日まで

負担限度額認定証には有効期限があります。負担限度額認定証は、申請した月の1日からその年の7月31日までの有効期限なので、継続する場合は更新申請が必要です。
負担限度額認定を受けている人には、期限満了前(6月中旬ごろ)までに更新用の申請書が送付されていますので、忘れずに提出するようにしましょう。

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は通常の介護保険では全額自己負担の「居住費」と「食費」の費用負担が軽減される介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)の制度をご紹介させていただきました。
認定申請には条件等があり、介護施設に入所するすべての人が対象になるわけではありませんが、もし現在、介護老人福祉施設の入所を検討しているまたは入所しており、預貯金などの資産が少ない、所得が低い人は介護保険限度額認定を申請すれば、施設サービス費の「居住費」と「食費」の負担が抑えられるかもしれません。
介護費用は想像以上にかかります。皆様が制度を上手に利用して少しでも負担軽減できるように、今回の情報をお役立ていただければ幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次