介護施設への入居時に身元保証人がいない場合に専門家が行う対策3選

目次

保証人の責任と役割

身元保証人は、主に賃貸契約や入院時、介護施設などの利用契約時に求められます。
これは損害賠償が発生した時の連帯責任者になってもらうためです。例えば賃料や施設利用料の滞納時や、物件設備の破損等の経済的保証。それに加えて、本人の意思確認が取れない場合に治療に同意してくれる人や、死亡や退所時に身元を引き受けてくれる人など、不測の事態に対応してくれる人が保証人として求められます。

身元保証人の条件や、保証の範囲は施設によって異なりますが、保証人は本人の経済的保証だけでなく、有事の際の連絡先の確保等をより確実なものとするために要求されています。

保証人が負担するもの】

  • 賃料・利用料滞納時の代償
  • 物損など損害を出した場合の代償
  • 施設側からの緊急呼び出し対応
  • 治療計画の同意
  • 死後の身元引受け
  • 退去手続きなどの事務処理 など

身元保証人は本人の子供や配偶者などの家族がなる場合が多いものの、友人や知人まで認めている場合もあります。しかし、家族や友人に負担はかけたくない人や、身元を保証しくれる家族や知人が身近にいない人もいます。

保証人を立てることが難しい人は次の方法をとりましょう。

保証人を用意できない場合の3つの対応方法

  • 保証人の代わりに後見人を立てることで代用できないか交渉する
  • 保証人の要らない施設を探す
  • 民間の身元保証会社に依頼する

まず1つ目は、後見契約を専門士業との間であらかじめ締結しておき、その材料をもとに、運営施設に理解してもらい保証人を立てずに入所できないか交渉することです。例えば保証人はいないけれども、後見人が付いていて、自分に何かあったら後見人が動いてくれることを伝えることですんなりと入所できるケースもありました。後見人について専門家に相談することで解決の糸口が見つかるかもしれません。

専門家とは、我々行政書士や弁護士、司法書士などの高齢者サポートを専門にしている士業のことです。
国家資格を有し、法律や制度に関する専門的な知識を広く持っている彼らに相談することで、専門家による的確なアドバイスや解決方法を提案してもらうことで、悩みや不安を解消する一歩に繋がるかもしれません。

2つ目は保証人の要らない施設を探すことです。
保証人を求められて焦ってしまうかもしれませんが、実はそもそも保証人を必要としない施設も存在します。そのため最初から保証人不要の施設を探すという方法もあります。施設数が限られるため入所したい施設が見つかるかどうかという懸念はありますが、その中に入所したい施設が見つかれば一番手軽な方法と言えます。

3つ目は、主に民間企業やNPO法人などの団体が行っている「身元保証サービス」を提供している保証会社に依頼するという方法です。このサービスは身寄りのない高齢者が賃貸契約や入院、介護施設の利用契約をする場合に保証会社が有料で身元保証人になってくれるというものです。主なサービス内容は身元保証支援ですが、万が一の緊急支援から葬儀や納骨等の死後事務までと多岐にわたります。身寄りのない高齢者や保証人のいない人にとって、非常に便利なサービスなため、近年需要は高まっています。

対応方法を比較

施設入所だけを目的とせず、今後起こり得る認知機能の低下や運動機能の低下に備え、後見制度等の活用を見据えた比較が大切です。

スクロールできます
専門士業に
後見人を依頼
保証人不要の
施設を探す
身元保証会社へ依頼
保証人
交渉により不要

一般事務委任
後見制度
死後事務委任
相続
特徴施設との交渉によって保証人不要で入所出来る可能性がある
監督官庁があるため不正がおきにくい
与える代理権も本人の意思で決定できる
費用は必要になときに発生する
保証人にはなれない
保証費用がかからない
入所したい施設が見つかれば一番手軽な方法
施設数が限られる
家族や友人に頼ることなく保証人を立てられる
初期費用がかかる
年会費やサービス提供に月額支払いが発生する
監督官庁がいないため預託金の扱いに関して不正が起こり得る
後見人が保証人になれない理由は?

成年後見人の役割は本人に代わって財産管理、身上監護を行うことにあり、いわば本人の代理人という立場です。もし保証人になってしまうと、自分自身の身元を保証するという矛盾した状況や、利益相反を生むことになります。利益相反が生じるような行為は、後見人の職責上行うべきではありませんし、そもそも身元の引き取りや債務の弁済は成年後見人の職務権限から逸脱した行為となります。そのため成年後見人は身元保証人にはなれません。

身元保証会社への依頼には注意する

預託金流用の公益財団法人、破産手続きに移行
2016/3/23 21:15日本経済新聞 電子版
高齢者らからの預託金流用が発覚していた公益財団法人「日本ライフ協会」(東京都港区)が、大阪地裁に申請した民事再生を断念し、破産手続きに移行することが23日、分かった。東京商工リサーチによると、負債総額は約12億円。事業は今月末で終了する。
事業譲渡を予定していた福岡市の一般社団法人「えにしの会」が「資金調達が困難になった」としてスポンサーを辞退したという。
2月に開かれた債権者向けの説明会で、保全管理人の弁護士は破産に伴う債権者への配当に費やせる資産を約4億5千万円と説明。破産した場合に返還できる預託金は4割程度になるとの見通しを明らかにしていた。
協会は15都道府県に事務所があり、契約者は約2600人。高齢者や障害者がアパートに入居する際の身元保証や、死亡時の葬儀などを支援する事業を実施していた。内閣府は今月、公益財団法人の認定を取り消した。〔共同〕

日本経済新聞

身元保証会社でのサービスについては、このような問題も発生しているため注意が必要です。
この保証会社はサービスの提供のために、入会金・会費として100万円、葬儀などの祭祀費用に50万円の預託金を求めて一括徴収し、資金を集めて不正流用したあげく破綻したため、利用者の多くがサービスを受けられなくなり、預けたお金が返還されない事態に陥ってしまいました。

身寄りのない高齢者にとって、お金を払えば保証人を立てられる身元保証サービスは一見すると手軽で便利なものかもしれませんが、契約したその保証会社が将来も存続しているとは限らないため安易に契約することは避けるべきです。

保証会社の契約内容によって異なりますが、サービス提供に関して入会金・会費、葬儀などの祭祀費用を求めらます。中にはサービスの利用に月額支払いを行っているケースもありますが、それでも万が一の緊急支援から葬儀や納骨等の死後事務費用として数十万円のまとまった預託金を求められることが多いです。もし契約した事業者がなくなった場合に、予定していたサービスが受けられなくなってしまい、お金が戻ってこないとしたら…。非常に怖い話です。

保証会社へ依頼する場合は、事業者を見極めてサービス内容や費用が妥当なものであるのか、預託金の管理方法などをよく比較検討する必要が出てきます。

老後は先々を見据えた準備が必要

今が後見制度の検討すべきタイミング

後見制度は、本人の判断能力が衰えたときに、本人に代わって後見人が契約を結んだり、財産管理を行ってサポートする制度です。
今は元気で全て自分一人で行うことが出来ても、これから先に必ず訪れる運動機能の低下や、認知機能の衰えとともに誰かのサポートが必要になります。身近に頼る人がいない場合は後見制度がその役割を担います。実際に判断能力がなくなり認知症になってしまうと法定後見を利用するしか選択肢がなくなります。
法定後見は裁判所によって後見人が選定されるもので、自分自身の意思で選ぶことはできません。後見人との関係性も一から構築することになります。

一方で元気で認知機能のしっかりとしている今であれば、任意後見という制度を使うと、自分自身の意思で後見人を選ぶことや、サポート内容をあらかじめ決めることが出来るので、ご自身にとって納得できる生活が送れるでしょう。
保証人の問題だけでなく、任意後見を含めた対策を検討する良いタイミングではないでしょうか。

死後に必要になる事務をご存知ですか?

  1. 遺体の引き取り、死亡証明書の受領や、死亡届の提出
  2. 訃報の連絡
  3. 葬儀、火葬に関する事務
  4. 遺骨の埋蔵または収蔵に関する事務、墓じまい手続き
  5. 行政機関等から発行された資格証明書、受給者証の返納
  6. 住居の明け渡し不動産賃貸借契約の解約
  7. 公共料金等の各種契約に関する解約手続き

殆どの場合は家族や親戚が行うことになるため、意識されることは少なく、葬儀、納骨など祭祀に係ること以外にも、住居の後片付けや行政手続きなど、死後事務と呼ばれるものは意外と多くあります。身寄りがなくこれらをお願いできる人がそばにいない場合は、専門士業などの第三者に依頼して死後事務委任契約を結ぶ必要があるでしょう。

但し、死後委任契約も認知症になってからでは契約することが出来ません。任意後見と併せて、今このタイミングでしっかりと検討することが大切です。任意後見契約から死後事務委任までを含めた契約を結ぶことで、老後の対策として備えることが出来るでしょう。

任意後見契約は本人の死亡によって契約が終了します。そのため後見契約だけでは死後のサポートが出来ず、死後事務委任契約を結ぶ必要があります。

まとめ 

保証会社に依頼すれば保証人を立てることはできますが、過去の報道を見ても様々なリスクが存在します。
安易に保証会社に依頼する前に、専門家に相談すればより良い解決策を提示してくれるでしょう。

私たちの事務所では身元保証だけでなく、老後のサポート含む幅広い提案を行っています。
今は元気でもこれから先、運動機能の低下や、認知機能の低下は起こるでしょう。そうなる前に任意後見や死後事務などを含めた老後の対策を検討することが大切です。


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