遺産分割協議とは?要点と遺産分割協議書の作成方法

相続人の確定と財産調査が完了したら次に遺産分割協議を行います。
その協議によってどのように分割するか話し合った合意結果を書面にまとめたものが遺産分割協議書になります。
今回は遺産分割協議の説明と分割方法・遺産分割協議書の作成について解説したいと思います。

目次

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人の財産を法定相続人全員『何を』『どのように』分割するのか話し合うことを言います。
法定相続人というのは民法で定められた相続順位に基づいて亡くなった人の財産を相続できる人のことをいい、配偶者とその血族が当てはまります。

遺産分割協議では相続人全員で話し合いを行う必要がありますが、必ずしも全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話やメールなどで意見交換をしながら協議を進めることも可能です。
最近ではグループチャットもあるので、そのようなツールを活用してもいいかもしれませんね。

遺産分割協議の期限

遺産分割協議に法的な期限はありませんが、相続税申告時に遺産分割協議書の提出が求められるので、相続を開始した日(相続人と知った日)から10か月以内に終わらせることが理想的です。

遺言書がある場合

遺言書に則り相続財産を分けるため、遺産分割協議は基本的に必要ありません。
ですが、遺言書に記載のない相続財産が見つかった場合は協議を行う必要があります。

相続財産の分割方法

相続財産を分割する方法は4つあります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、どのように分割するのがいいか相続人同士でしっかり検討しましょう。

現物分割

預貯金や株、不動産などをそのままの形で分割する方法です。
手続きが簡単で財産をそのまま残しておけるメリットがある一方で、法定相続分に従って分割することが難しい為、不公平になりやすいデメリットがあります。

換価分割

財産を全て売却して現金に換えて分割する方法です。公平に分割できるというメリットがありますが、売却時の手間や費用がかかり売却した利益に所得税や住民税がかかることがデメリットになります。

代償分割

相続人のうち一人だけが財産を相続し、その他の相続人に法定相続分の差額を現金などで支払う方法になります。
財産のほとんどが不動産の場合や、相続する自宅に住み続けたい場合に使われますが、現物を相続する人にはその他の相続人に代償金を支払う資力が必要になります。
相続する財産をそのままの形で残せるメリットがありますが、そのほかの相続人に代償金を支払う資力がないと使えないデメリットがあります。

共有分割

財産の一部、または全てを相続人全員で共同で所有する方法です。
公平な分割が可能で財産を売却することなくそのまま残せるメリットがあります。
ただし、財産の利用や将来の売却については相続人全員の合意が必要になるので自由度が低くなります。
共有財産を保有する相続人が亡くなってしまい、権利がそのお子様に移ることで利害関係が複雑になるというデメリットがあります。

遺産分割協議の要点

遺産分割協議をスムーズに進めるコツは、まずは相続財産の全てを相続人全員に開示することです。
内容をあやふやにしたり、はぐらかすことは相続人との間に不信感が生まれトラブルに発展しかねません。
預貯金や不動産の評価額など調査によって明らかになった情報は隠さずに開示して話し合いましょう。

次に、遺産分割協議の時に注意しておきたいところをみていきたいと思います。

認知症など判断能力が不十分な人がいる場合

相続人の中に認知症により判断能力が不十分な人がいる遺産分割協議は無効と判断される可能性があります。
判断能力の程度によっては家庭裁判所に成年後見人を選任しいてもらい、本人に代わって遺産分割協議を行います。

また未成年者がいる場合はその親が代わりに協議に参加します。
しかしその親自身も相続人である場合は利益相反する関係になるため、未成年者の代わりに協議に参加することは法律で禁止されています。
つまり親と子で財産を分け合う場合はその親は子の代理人になれないということです。
そこで『特別代理人』を家庭裁判所で選任してもらい、選任された代理人が未成年の代わりに遺産分割協議を行います。
未成年の子供が二人いる場合はそれぞれに『特別代理人』を選任してもらう必要があります。

二次相続についても検討する

相続割合を決めるときには今回の相続だけでなく、将来起こりえる二次相続についても検討したうえで協議する必要があります。
二次相続とは、今回相続人となった人が亡くなったときに発生する相続のことです。
例えば、配偶者とその子供が相続して、その後配偶者が亡くなりその子供が全てを相続する場合が二次相続となります。
分割方法によっては、一次相続と二次相続で相続税負担の合計が異なる場合もあるためしっかり検討しましょう。

税金対策のみで協議をしない

財産相続にはその金額によって相続税が課税されます。
ですので協議の際は相続税対策についても考えていかなければいけません。

相続税は【相続財産の総額】ー【基礎控除額】で計算します。その金額が1円でも超えていれば課税されますので相続税申告が必要です。
基礎控除額は【 3000万円+600万円×法廷相続人の数 】で計算します。

相続人の数と基礎控除額

  • 相続人1人の場合 3600万円
  • 相続人2人の場合 4200万円
  • 相続人3人の場合 4800万円
  • 相続人4人の場合 5200万円

基礎控除額を超える相続財産がある場合でも、内容によっては相続税の減税や特例制度を利用して相続税が課税されないケースもありますので減税や特例税度についてもしっかり確認しておきましょう。

また相続税対策として相続税を少なくすることばかりを考えて協議を行うことは結果として不利益になることもあるため注意しましょう。

例えば、高齢の母一人に経営用マンションを相続させた場合、後に母が認知症になり結果としてその子供が賃貸経営できなくなったしまったということもありえます。税金対策にとらわれず様々なケースを想定して検討することが必要です。

協議がまとまらない場合

意見が食い違い協議がまとまらない場合や、連絡のつかない相続人がいる場合(全員での話し合いが難しい場合)は家庭裁判所へ遺産分割調停の申し立てをする必要があります。
また遺産分割調停でも成立しない場合は遺産分割審判に移行します。

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議によって相続人全員で財産をどのように分割するか話し合った合意結果を書面にまとめたものが遺産分割協議書にと言います。一人でも合意していない遺産分割協議書は無効になります。

遺産分割協議書の内容については第三者が見てもわかるように誰が』『どの財産を』『どれくらい』相続するのかを明確に記載しておく必要があります。
書類の書き方に決まった様式はないのでご自身で作成することも可能ですが、以下の内容は記載するようにしましょう。
手書き・パソコンどちらでも可能ですが、記載内容や書き方に不安がある場合や作成までの時間や手間を省きたい方は専門家に相談し作成してもらう方法もあります。

遺産分割協議書に記載する内容

  • タイトル【遺産分割協議書】と書く
  • 被相続人の情報(亡くなった人)最後の住所・氏名・死亡日
  • 相続人全員の名前
  • 相続人が合意した旨を記載
  • 遺産分割の内容を明確に記載する
    現金 
    預貯金 銀行・支店、口座名、口座番号
    不動産 土地・建物の住所、面積など
    株式・有価証券情報 など
  • 後に発覚した財産があった場合についてどうするか (*)
  • 合意日
  • 相続人全員の署名と実印の押印

(*)後日発覚した財産をどうするか記載する文言には注意が必要です。
例えば「本協議書に記載のない財産または後日判明した財産は○○が相続します」というような文言があると、後に発覚した借金までも指定された相続人が相続してしまうことになるからです
その場合は「本協議書に記載のない財産または後日判明した財産については別途協議を行うものとする」という様に記載しておくとよいでしょう。
ただし、隠れた負債の心配がない場合や、判明していないプラスの財産が僅少にとどまる場合は、前述のように、遺産の取り扱いを決めておくことで、再び遺産分割協議を行う手間を省くことができます。

遺産分割協議書

被相続人  ○○太郎
生年月日  昭和〇年〇月〇日
死亡年月日 令和〇年〇月〇日
本籍地   大阪府守口市○○町××―△△
最終住所地 大阪府守口市○○町××―△△

被相続人 ○○太郎の死亡により、相続人○○花子、○○真一郎、△△すみれ、の全員は被相続人の財産について協議を行った結果、次のとおり遺産分割することに合意した。

1.相続人○○花子が相続する財産
 (1)土地
  ・所在 大阪府守口市○○町
  ・地番 ××番△△
  ・地目 宅地
  ・地籍 300平方メートル
 (2)建物
  ・所在 大阪府守口市○○町××番地
  ・家屋番号 ××番△△
  ・種類 居宅
  ・構造 木造瓦葺 2階建
  ・床面積 1階  △△平方メートル 2階○○平方メートル

2,相続人○○真一郎が相続する財産
 (1)預貯金
  ○○銀行 △×△支店 普通預金 口座番号××△△〇〇 金1,000万円
 (2)株式
  株式会社○○△△の株式 5,000株 

3.相続人△△すみれが相続する財産
 (1)預貯金
  ○○銀行 △×△支店 定期預金 口座番号××△△〇〇 金1,000万円
  ○○信用金庫 △×△支店 普通預金 口座番号××△△〇〇 金800万円

4.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合は別途協議を行うものとする。

以上のとおり遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を作成し、相続人がそれぞれ署名・捺印し各自壱通保有するものとする。

作成日令和〇年 〇月 〇日

相続人 住所 大阪府守口市○○町××―△△
○○ 花子 (実印)
相続人 住所 大阪府門真市○○町××―△△
○○ 真一郎 (実印)
相続人 住所 大阪府大阪市旭区××―△△
△△ すみれ (実印)

遺産分割協議書は1通でも問題ないといわれていますが、トラブルを防ぐためにも相続人全員分の遺産分割協議書を用意して保管しておきましょう。
その場合それぞれ自筆で署名し、実印を押印します。
添付書類として実印である証明に相続人全員の印鑑証明を用意してください。

遺産分割協議書が必要な相続手続き

遺産分割協議書が必要になる相続手続きは以下の通りです。

  • 相続税の申告
  • 不動産の名義変更
  • 預貯金の名義変更・解約
  • 株式の名義変更
  • 自動車の名義変更

まとめ

さて、ここまで遺産分割協議から遺産分割協議書の作成までの流れを順を追って解説してきましたがいかかでしょうか。
相続する財産がそこまで多くない場合や、相続人全員での話し合いがスムーズにまとまるようであれば、遺産分割協議書の作成までそこまで難しくないかもしれません。
ですが、相続人同士の関係性が芳しくない方や、相続人数や財産の種類が多い場合など状況によってはかなりの時間と手間がかかることは容易に想像できるでしょう。
また遺産分割協議書を作成することが相続手続きのゴールではありません。
相続手続きに少しでも不安があったり、かかる時間や手間の負担を軽減したい方は専門家に相談することをお勧めします。

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