【遺言書文例集③】内縁の妻または夫に全財産を残したい場合の遺言書の書き方

目次

内縁のパートナーが抱える相続問題

パートナーの在り方について多様化してきている現代では、法律上の婚姻関係にとらわれず 、婚姻後の夫婦と同様に共同生活をしている男女や、婚姻関係を結べずに暮らしている人たちが多くいます。

このように法律に基づく婚姻届は出していないけれど、事実上結婚生活を営んでいる男女関係のことを内縁関係と言います。お互いが法律に縛られず、尊重し合う生活はとても素晴らしく思いますが、その一方で問題点があることにも留意しなければなりません。

遺言書を書かずに内縁のパートナーのどちらかが先に亡くなった場合、パートナーに遺産を相続する権利は一切ありません

また、亡くなった人の介護や生活の手伝いを行っていた場合、遺産に対して貢献分の権利を主張できる「特別寄与分」という制度はありますが、この制度の請求ができる人は亡くなった人の親族に限られているため、こちらも内縁のパートナーには利用することが出来ません。

しかし、苦楽を共にしたパートナーにも配偶者と同等またはそれ以上に遺産を残してあげたいと考える人もいるでしょう。
そのような気持ちを尊重し実現することが出来る唯一の方法が遺言書を書くことです。

ではどのような遺言書を書けばパートナーへ遺産を残すことが出来るのか、次の項目で確認していきましょう。

遺言書の書き方(見本)

遺言書

遺言者○○太郎は、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、その有する一切の財産を遺言者の内縁の妻○○花子(昭和〇年〇月〇日生 住所○○)に包括して遺贈する*①



第2条 遺言者は本遺言の遺言執行者として次のものを指定する。*② 

   住 所 大阪府守口市○○ー○丁目〇番〇号
   氏 名 行政書士 ○○ △△

 

   

令和5年3月30日
大阪府大阪市旭区○○丁目○○番地

遺言者 ○○太郎  

*① 内縁の妻には相続権がない為、「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。
また所在を明らかにするために生年月日と住所を記載をしましょう。

*② 遺産の中に不動産が含まれている場合、内縁の妻は遺贈されても登記の単独申請が出来ません。法定相続人全員と共同申請をする必要があります。
内縁者が相続人に手続きを依頼をすることは心理的にも負担のかかることでしょう。あらかじめ遺言執行者を指定しておくことで、受遺者(遺贈された人)と遺言執行者で申請ができるようになります。パートナーに心理的負担をかけずに相続手続きをスムーズに行うためにも、公平公正な第三者を遺言執行者として指定しておくことも一考です。

遺言書を書くときは遺留分に注意する

内縁の夫に両親がいる場合や前妻のとの子がいる場合に上記のように包括して遺贈すると記載すると、遺留分侵害請求をされる可能性があります。
遺留分とは亡くなった人の法定相続人に最低限保障される遺産の取り分です。この権利は遺言でも奪うことはできません。
したがって、後々トラブルにならないためにも法定相続人がいる場合は遺留分に配慮して書く必要があります。

遺留分が認められる相続人の範囲は、配偶者と亡くなった人と血のつながりのある直系尊属(両親、祖父母)と直系卑属(子供、孫)だけです。兄弟姉妹や甥姪には遺留分は認められません。

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