【遺言書の文例集②】子供のいない夫婦のための遺言書の書き方

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子供のいない夫婦が直面する遺産相続問題

年々出生率が低下し、子供ができない、または子供を持たないという夫婦が増えている日本ですが、その場合に抱える老後の不安は様々なものがあります。
さらに追い打ちをかけて、時代とともに兄弟間、親族間の関係が希薄になることで、頼りたくないという感情により相続問題を複雑化させています。

テーマとしては、お金のこと、暮らしのこと、介護のこと、相続のこと、が挙げられますが、ここでは子供のいない夫婦の「相続のこと」について考えていきましょう。

子供のいない夫婦の場合、どちらか一方が亡くなったらその財産はどうなるでしょうか。
配偶者が全財産を取得すると考える人もいるでしょう。しかしそのようなケースは極稀です。

財産は配偶者と法定相続人に分配されます。法定相続人とは亡くなった人と血のつながりのある親族が当てはまり、法律で決められた相続順位に則り相続されます。亡くなった人の両親もすでにいない場合はその兄弟姉妹が当てはまります。

法廷相続人の関係と相続順位

法定相続分の割合

配偶者+子  配偶者 1/2  子 1/2 

配偶者+両親  配偶者 2/3 両親 1/3

配偶者+兄弟姉妹  配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4 

そのため、配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹と残された財産の分け方について話し合う遺産分割協議を行うことになります。そして1/4の法定相続分を請求されたら断ることは困難です。

仮に、配偶者のほかに兄弟姉妹しか相続人がいないケースで、夫が遺言書を書かずに評価額7500万円の自宅の土地と家屋、預貯金2500万円の総額1億円の財産を残して死亡したとします。
その場合、兄弟姉妹が1/4の2500万円を相続できることになり、妻は3/4相当の自宅、土地と家屋しか相続することが出来ず、老後の生活に不安がある状況になってしまいます。

遺言書の圧倒的メリット

遺言書に従って相続手続きを行うことになるため、以下の負担は軽減されます。

【遺言書を書いた場合に必要がなくなる相続手続き

  • 相続人の調査
  • 財産の調査
  • 遺産分割協議での合意書

遺言書が無い場合、まず相続人調査と財産調査を行う必要が出てきます。亡くなった人の戸籍収集を行い法定相続人が誰に当たるかを調べ、故人の所有する財産がどれくらいあるかを調べます。

実際に本籍のある役所に行き謄本を取得し、亡くなった人の死亡から遡って調査していくのですが、両親が亡くなっている場合はその両親の戸籍も遡って確認しなければなりません。そして兄弟姉妹がいたら存命しているのか調べて、法定相続人を確定します。このように相続人が複数いる場合は調査だけでも通常の3倍近くの作業負担がかかることになります。
ここまででも非常に手間のかかる作業になるのは容易に想像できますよね。

亡くなった人に配偶者以外に両親や兄弟姉妹などの血族がいない場合は、残された財産はすべて配偶者に相続されます。しかし疎遠の兄弟姉妹がいたり、甥や姪などの代襲相続が発生した場合は、残された配偶者がその親族に連絡を取り、法定相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

分割内容の同意が得られなければ相続はできませんし、預金を引き出すことも不可能です。これらの作業を残された配偶者一人が担うのは精神的にもかなりの負担になるでしょう。


出来れば残された相手にこのような負担を強いるようなことは避けたいですし、自分の死後も不安のない穏やかで健やかな人生を送ってもらいたいと考えるのではないでしょうか。そのため、子供のいない夫婦にこそ遺言書を書いておく必要があると言えます。

遺言書を作成するときのポイント

  • 夫婦の連名で遺言書作成はできない
  • 状況が変わっても効果のある内容にする配偶者のどちらかが先に亡くなることも想定しておく)
  • あらかじめ遺言執行者を決めておく

遺言書の書き方(見本)

では実際にどのよう遺言書を書くといいのでしょうか。以下にテンプレートを用意したので参考にご覧ください。

遺言書

遺言者○○太郎は、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、その有する一切の財産を遺言者の妻○○花子(昭和〇年〇月〇日)に相続させる。

第2条 遺言者は、上記○○花子が遺言者の死亡以前に死亡した時は、第1条により上記○○花子に相続させるとした財産を次のものに遺贈する。*①

   受遺者 ○○△△財団

   所在地 大阪府大阪市○○区〇丁目〇



第3条 遺言者は本遺言の遺言執行者として次のものを指定する。 

   住 所 大阪府守口市○○ー○丁目〇番〇号
   氏 名 行政書士 ○○ △△

   

令和5年3月30日
大阪府大阪市旭区○○丁目○○番地

遺言者 ○○太郎  


*①配偶者が先に亡くなることも考慮して、誰に相続させるのかまたは遺贈するのかを記載しておくと良いでしょう。

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